
2012年12月09日
ヘラトリ50号 中国進出企業崩壊の危機
迫りくる中国進出企業崩壊の危機~
尖閣を言い訳にせず大至急進出先を分散せよ!~』
http://heratri-topics-jp.blogspot.jp/2012/12/blog-post.html
昨日12月8日付けで、
『中国ビジネスの崩壊~未曽有のチャイナリスクに襲われる日本企業~』
(青木直人著)という書籍が発刊された。
著者は「ニューズレター・チャイナ」の編集長である。
今夏の尖閣諸島国有化以降、中国国内で起きた「対日本企業暴動」については、新聞・テレビで報道されていないこと、当事者の日本企業も自社の評判悪化を恐れて「沈黙」していることがあまりにも多く、
「危機の本質と切迫度が日本国内に伝わっていない」と著者は主張する。
いくつか、その具体例を同書の中から挙げてみよう。
(1)現在、中国に進出した日本企業には、大量の脅迫状が組織的に山ほど届けられているが、企業側はこれを秘密にして、マスメディアも報道していない。
(2)インターネット上では、自動車・家電を中心に、日本製品の不買運動が大々的に呼びかけられているが、これには中国政府が、事実上乗り出している。
(3)中国人顧客の間で、既に注文してあった日本製品の代金に対する不払いが広がっており、「愛国無罪」を理由にした代金未回収が各地で相次いでいる。
(4)中国関連株の更に一層の暴落を予測して、機関投資家や証券会社は中国株からどんどん手を引いており、中国進出日本企業に損害保険を販売してきた損保業界も、「これ以上のリスクは負えない」として、一部の損害保険を補償の対象から外し始めている。
(5)今夏以降、中国共産党は日本企業の監視を強め、党が企業内に設置している委員会を通じて、日本企業のやり取りする電話・ファックス等は、全て盗聴する体制に入った、
等々、他にも枚挙に暇(いとま)がないほど多くの事例が、同書の中で指摘されている。
欧米企業の撤退を尻目に、中国進出を続けていた日本企業
問題は、日本企業の現下の苦境を尻目に、欧米企業は、今夏の尖閣問題勃発以前から、既に中国からの撤退を進めていたということである。
アメリカが、オバマ政権のイニシアチブの下、「中国駐在のアメリカ人社員の帰国を水面下で進めていた」ことは、長谷川慶太郎氏を始めとして複数の識者が指摘しているが、
現実に本書の中に登場する統計を見るだけでも、
日本企業は対中国投資を2011年だけで前年比40%以上増やし、2012年上半期でも17%増やしているのに対して、
ヨーロッパ(EU)は、2011年が40%減、2012年前半が7%減、アメリカも、同時期は横ばいに抑えており、世界全体では3.8%減(2012年上期)で、直近の今年9月には、全世界からの中国投資は6.8%減にもなっていた。
この中での日本企業の突出ぶりは、どうも見ても異常である。
今後日本の経済界は、「中国進出企業の安全のために、尖閣問題等では穏便な取扱いを」ということを水面下で日本の新政権に要求していくと思われるが、
そもそも、2010年の第一次尖閣問題(漁船衝突事件)以降も、欧米企業の撤退を尻目に、いささか"ノー天気に"中国進出を進めてきた責任(不明)を考える必要がある。
尖閣で譲歩すれば、次は必ず台湾と沖縄を中国は取りに来る。それは日本のシーレーン(中東からの原油輸入ルート)の遮断(日本経済の窒息)を意味し、
中国政府の内部文書(外交政策の工程管理表)によれば、日本の属国化(チベット・ウイグル化による日本国民の抑圧)へと繋がっていく。
一企業の経営判断のミスを埋め合わせる代償として、とても差し出せるもの(=尖閣での譲歩)ではないのだ。事柄の重大さをよく理解しておいた方が良い。
本当に中国依存度が高いのは、一部の会社
同書の指摘で面白いところは、
「この問題は、実は一部の企業の問題である」
ということである。
確かに冷静に観れば、日本のGDPに占める対中国輸出のウェイトは僅か(わずか)2%。日本の上場企業の総売上に占める中国の割合も7%程度にすぎない。
にもかかわらず、「中国の占める比重は決定的に大きい」というイメージばかり先行しているのは、一部企業と中国政府(及びその意を汲んだ日本のマスメディア)の意向によるところが大きいだろう。
日本企業の中で中国依存度が10%を超える企業は、同書によれば、実は10社しかない。
(具体的社名を知りたい方は、同書p34を参照されたい。)
但し、その中の堂々の第三位に、経団連の米倉現会長の出身会社(住友化学)が入っていることは、注目されてよいだろう。
それ以外に、中国依存度は実は高くないのだが、(中国での)売上の絶対額の大きい企業(トヨタ、イオンなど)の声がマスコミに反映されている(広告の大スポンサーでもあるので)ということも、同書の中では指摘されている。
いずれにせよ、中国の景気後退(バブル終焉)は必至であり、一方で高騰した中国の労働賃金は、もはや下がらないだろう。
日本企業としては、当然、「中国からの撤退」や「他国への移転」を考えざるを得なくなるが、その際中国政府が、
「労働争議を仕掛けて、日本人経営者の出国禁止(人質化)に持ち込む」、
「資産を安価で買い叩き、様々な名目での金品の拠出を強制して、事実上、日本企業の資産を接収する」
などの策に出てくるのは、「ほぼ必定である」というのが本書の見解である。
(しかも、「日本企業の現地駐在責任者達も、それを自覚しているらしい」という点が恐ろしい。)
多少の損切り覚悟で、早急に進出先を多角化する必要がある。本来、こういう仕事は、政府が主導するべきなのだが、今の民主党・自民党には、とてもそれだけの見識も胆力も無いだろうから、自衛策が必要だ。
その際、まかり間違っても、
「自分達が厳しい決断をしなくて済むように、尖閣問題で政府は中国とコトを荒立てないでほしい」
などという、先の見えていない、かつ、末代まで恥をさらすような「言動」は夢々されないよう、心からお願いする次第である。(了)
尖閣を言い訳にせず大至急進出先を分散せよ!~』
http://heratri-topics-jp.blogspot.jp/2012/12/blog-post.html
昨日12月8日付けで、
『中国ビジネスの崩壊~未曽有のチャイナリスクに襲われる日本企業~』
(青木直人著)という書籍が発刊された。
著者は「ニューズレター・チャイナ」の編集長である。
今夏の尖閣諸島国有化以降、中国国内で起きた「対日本企業暴動」については、新聞・テレビで報道されていないこと、当事者の日本企業も自社の評判悪化を恐れて「沈黙」していることがあまりにも多く、
「危機の本質と切迫度が日本国内に伝わっていない」と著者は主張する。
いくつか、その具体例を同書の中から挙げてみよう。
(1)現在、中国に進出した日本企業には、大量の脅迫状が組織的に山ほど届けられているが、企業側はこれを秘密にして、マスメディアも報道していない。
(2)インターネット上では、自動車・家電を中心に、日本製品の不買運動が大々的に呼びかけられているが、これには中国政府が、事実上乗り出している。
(3)中国人顧客の間で、既に注文してあった日本製品の代金に対する不払いが広がっており、「愛国無罪」を理由にした代金未回収が各地で相次いでいる。
(4)中国関連株の更に一層の暴落を予測して、機関投資家や証券会社は中国株からどんどん手を引いており、中国進出日本企業に損害保険を販売してきた損保業界も、「これ以上のリスクは負えない」として、一部の損害保険を補償の対象から外し始めている。
(5)今夏以降、中国共産党は日本企業の監視を強め、党が企業内に設置している委員会を通じて、日本企業のやり取りする電話・ファックス等は、全て盗聴する体制に入った、
等々、他にも枚挙に暇(いとま)がないほど多くの事例が、同書の中で指摘されている。
欧米企業の撤退を尻目に、中国進出を続けていた日本企業
問題は、日本企業の現下の苦境を尻目に、欧米企業は、今夏の尖閣問題勃発以前から、既に中国からの撤退を進めていたということである。
アメリカが、オバマ政権のイニシアチブの下、「中国駐在のアメリカ人社員の帰国を水面下で進めていた」ことは、長谷川慶太郎氏を始めとして複数の識者が指摘しているが、
現実に本書の中に登場する統計を見るだけでも、
日本企業は対中国投資を2011年だけで前年比40%以上増やし、2012年上半期でも17%増やしているのに対して、
ヨーロッパ(EU)は、2011年が40%減、2012年前半が7%減、アメリカも、同時期は横ばいに抑えており、世界全体では3.8%減(2012年上期)で、直近の今年9月には、全世界からの中国投資は6.8%減にもなっていた。
この中での日本企業の突出ぶりは、どうも見ても異常である。
今後日本の経済界は、「中国進出企業の安全のために、尖閣問題等では穏便な取扱いを」ということを水面下で日本の新政権に要求していくと思われるが、
そもそも、2010年の第一次尖閣問題(漁船衝突事件)以降も、欧米企業の撤退を尻目に、いささか"ノー天気に"中国進出を進めてきた責任(不明)を考える必要がある。
尖閣で譲歩すれば、次は必ず台湾と沖縄を中国は取りに来る。それは日本のシーレーン(中東からの原油輸入ルート)の遮断(日本経済の窒息)を意味し、
中国政府の内部文書(外交政策の工程管理表)によれば、日本の属国化(チベット・ウイグル化による日本国民の抑圧)へと繋がっていく。
一企業の経営判断のミスを埋め合わせる代償として、とても差し出せるもの(=尖閣での譲歩)ではないのだ。事柄の重大さをよく理解しておいた方が良い。
本当に中国依存度が高いのは、一部の会社
同書の指摘で面白いところは、
「この問題は、実は一部の企業の問題である」
ということである。
確かに冷静に観れば、日本のGDPに占める対中国輸出のウェイトは僅か(わずか)2%。日本の上場企業の総売上に占める中国の割合も7%程度にすぎない。
にもかかわらず、「中国の占める比重は決定的に大きい」というイメージばかり先行しているのは、一部企業と中国政府(及びその意を汲んだ日本のマスメディア)の意向によるところが大きいだろう。
日本企業の中で中国依存度が10%を超える企業は、同書によれば、実は10社しかない。
(具体的社名を知りたい方は、同書p34を参照されたい。)
但し、その中の堂々の第三位に、経団連の米倉現会長の出身会社(住友化学)が入っていることは、注目されてよいだろう。
それ以外に、中国依存度は実は高くないのだが、(中国での)売上の絶対額の大きい企業(トヨタ、イオンなど)の声がマスコミに反映されている(広告の大スポンサーでもあるので)ということも、同書の中では指摘されている。
いずれにせよ、中国の景気後退(バブル終焉)は必至であり、一方で高騰した中国の労働賃金は、もはや下がらないだろう。
日本企業としては、当然、「中国からの撤退」や「他国への移転」を考えざるを得なくなるが、その際中国政府が、
「労働争議を仕掛けて、日本人経営者の出国禁止(人質化)に持ち込む」、
「資産を安価で買い叩き、様々な名目での金品の拠出を強制して、事実上、日本企業の資産を接収する」
などの策に出てくるのは、「ほぼ必定である」というのが本書の見解である。
(しかも、「日本企業の現地駐在責任者達も、それを自覚しているらしい」という点が恐ろしい。)
多少の損切り覚悟で、早急に進出先を多角化する必要がある。本来、こういう仕事は、政府が主導するべきなのだが、今の民主党・自民党には、とてもそれだけの見識も胆力も無いだろうから、自衛策が必要だ。
その際、まかり間違っても、
「自分達が厳しい決断をしなくて済むように、尖閣問題で政府は中国とコトを荒立てないでほしい」
などという、先の見えていない、かつ、末代まで恥をさらすような「言動」は夢々されないよう、心からお願いする次第である。(了)
